大阪府立国際児童文学館の存続についてのお願い(要望書)

大阪府立国際児童文学館の存続についてのお願い(要望書)

2008年5月1日

大阪府知事
橋 下  徹 殿

社団法人 全国学校図書館協議会
理 事 長  笠 木  幸 彦

 謹 啓 貴職ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 貴職は、「財政再建プログラム試案」(2008年4月)で出資法人の見直しにより、類似の事業の統合を掲げています。その中で、大阪府立国際児童文学館の蔵書を府立図書館へ移転し、平成21年度に廃止することを示唆しました。
 昨今、子どもの読書環境については、「子どもの読書活動の推進に関する法律」(2001年)や「文字・活字文化振興法」(2005年)の制定など、国や地方自治体と民間が連携し、学校図書館をはじめとする子どもの読書環境の整備・充実を進めているところです。また、大阪府も「大阪府 子ども読書活動推進計画」(2003年)の中で、国際児童文学館は「子ども向けの本を豊富に用意し、子どもたちと保護者がくつろぎながら、好きなとき好きなだけ本と過ごせるような場を提供する...」など重要な役割を担うことが明記されています。
 国際児童文学館は1984年の開館以来、国際的な子どもの本の資料・情報・研究センターとして、図書館的機能に加えて博物館的機能、研修・研究館的機能を持ち、子どもの本に関わる総合的・文化的な役割を果たしています。約69万点の所蔵資料の中には、現在入手困難な明治・大正・昭和期に出版・刊行された図書や雑誌も多く、我が国の貴重な歴史的財産となっています。また、国際的規模で子どもの本およびその関連資料を収集・整理・公開する国内唯一の研究機関です。児童文学や児童文化に関する研究、子ども向け検索システムの開発、読書活動推進事業などにおいても既存の府立図書館とは役割を異にする高度な研究開発機能を有しています。
 当会は、国際児童文学館の設立趣旨に賛同し、子どもの読書活動の推進などを通して連携を深めてまいりました。また、貴職の基本政策の一つである「子どもが笑う、大人も笑う大阪に」の実現の為に国際児童文学館が持つ財産と機能は、極めて有用だと考えます。これらの理由から、「府立図書館への移転」は設立趣旨を大きく変更してしまう重大な問題であり、学校図書館の専門団体として見過ごすことはできません。国際児童文学館が持つ他に類を見ない独自の機能を、大阪府民や子どもたちに対して発揮できなくなることを危惧します。
 貴職も子育て中の一個人として、子どもの未来を案じていらっしゃることと思います。日本の未来を託す子どもたちが自ら進んで読書できる環境を整えることは、生きる力を育むための基盤となるものであります。
 以上の見地に立って、我が国が世界に誇る児童文学研究の中核である大阪府立国際児童文学館の存続と財団法人大阪国際児童文学館の運営の継続を切望するものであります。

謹白

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