学校図書館憲章

1990年の全国学校図書館協議会創立40周年を記念し、第40回総会においてこれからの学校図書館のありかたを明確に指し示す指針となる憲章を作成することが決議されました。この決議を受け、学校図書館憲章委員会が原案を作成し、全国研究大会分科会での討議、各県学校図書館協議会での検討、学識経験者の意見等を参考にして成案を作成し、第42回総会で採択されたものです。
  この学校図書館憲章は、これからの学校図書館を考えていくときの最も基本となる拠り所であり、学校図書館に携わる人々が共通して持つ理念となっているものです。時あるごとにこの憲章に立ち返って、新しい学校図書館を創りつづけていくのです。

1991年5月22日
全国学校図書館協議会

わが国は、いま生涯学習社会、国際化社会、高度情報社会、個性重視社会への変革を迫られている。これにともない教育もまた大きな転換を現実の課題としている。自己更新する能力、異文化を理解し多様な価値観を認める態度、情報を収集分析する能力、自己の意見や生きかたを大切にしながら他を認める態度の育成など、今日ほど教育に求められているときはない。
  そのために、学校は学習を構造的に改革し、児童生徒が自ら課題を発見し、情報を探索し、発表し、討論して、創造的に知識を自己のものとするような学習を展開することが至上の命題となってきた。この学習は、とりも直さず生涯にわたる自己教育の方法を会得させ、自学能力を高める教育を推進することにほかならない。このような教育が展開され、児童生徒の主体的な学習が保障されたとき、児童生徒ははじめて学ぶ喜びや楽しさを知り、学校は通わされる場から、進んで通いたい場へと再生するに違いない。この時期に、なお、児童生徒に知識を詰め込み、その記憶度をテストによって定着を図るような学習を学校教育と考えているならば、もはや学校は時代の要請に応えることはできない。
  また、今日児童生徒の読書離れは深刻なものがある。かつて読書は、教養を高め、娯楽を求め、情報を得ることのすべてを充足させていた。多様なメディアの出現によって、現代はその依存度を著しく減少させている。しかし、読書は、思考力を育成し、内部から自己改革を促すという他のメディアによって代えることのできない固有の機能を有している。民主主義の発展には、国民が思慮深く、英知あることが前提である。したがって読書教育は、民主主義社会における学校教育の基本的な使命である。
  学校図書館は、学校の情報センターであり、学習センターであり、かつ、読書センターである。学校における中核的な機関として学校図書館は、その教育機能を存分に発揮しなければならない。学校図書館なくして、現代教育の展開はあり得ないからである。学校図書館の充実振興こそは、いま不可欠な緊急課題である。
  全国学校図書館協議会は、創立40周年を迎えた。これを機に、われわれはこれまでの道程を点検し、学校図書館の新たなる進路を明確にしたいと考えた。われわれは、組織をあげてあるべき学校図書館像を追求し、その論議を学校図書館憲章に結実させた。本日総会にあたり、本憲章を採択し、その定めるところの実現に不断の努力を続けることを誓うものである。

理念
  1. 学校図書館は、資料の収集・整理・保存・提供などの活動をとおし、学校教育の充実と発展および文化の継承と創造に努める。
  2. 学校図書館は、児童生徒に読書と図書館利用をすすめ、生涯にわたる自学能力を育成する。
  3. 学校図書館は、資料の収集や提供を主体的に行い、児童生徒の学ぶ権利・知る権利を保障する。
  4. 学校図書館は、他の図書館、文化施設等とネットワークを構成し、総合的な図書館奉仕を行う。
  5. 学校図書館は、児童生徒・教職員に対する図書館の奉仕活動・援助活動をとおして、教育の改革に寄与する。
機能
  1. 学校図書館は、多様な資料と親しみやすい環境を整え、児童生徒の意欲的な利用に資する。
  2. 学校図書館は、図書館および資料・情報の利用法を指導し、主体的に学習する能力を育成する。
  3. 学校図書館は、読書教育を推進し、豊かな人間性を培う。
  4. 学校図書館は、適切な資料・情報を提供し、学習の充実を図る。
  5. 学校図書館は、教育に必要な資料・情報を提供し、教職員の教育活動を援助する。
職員
  1. 学校図書館を担当する者は、専門性に立脚した高い識見を持ち、教育者としての自覚のもとに、その職務を遂行する。
  2. 学校図書館を担当する者は、専門職としての責任と権限を持ち、その運営をつかさどる。
  3. 学校図書館を担当する者は、専門的能力を高めるため、不断の研究と研鑽に努める。
資料
  1. 学校図書館は、図書資料・逐次刊行資料・視聴覚資料・ソフトウェアなど広範な資料を備える。
  2. 学校図書館は、児童生徒・教職員の多様な要求に応えるために、必要にして、かつ、十分な資料を備える。
  3. 学校図書館は、選定基準に基づいた質の高い資料を選択し、収集する。
施設
  1. 学校図書館は、利用しやすい場所に専用の施設として設置する。
  2. 学校図書館は、研究・調査・読書・視聴・討議・制作など多様な活動に応えるために、各種のスペースと設備を十分に確保する。
  3. 学校図書館は、快適で魅力的な環境を準備する。
運営
  1. 学校図書館は、全校の協力や支持を得て、運営する。
  2. 学校図書館は、学校運営上の重要な組織として位置づけられる。
  3. 学校図書館は、校内外のあらゆる資料や情報を効率的に利用できるように、システム化を図る。
  4. 学校図書館は、資料・情報の提供、学習・読書の場の提供、利用者の援助を行うなど、積極的な奉仕活動を展開する。
  5. 学校図書館は、その目的を果たすのに必要にして十分な経費を確保する。
  6. 学校図書館は、他の図書館、文化施設等とのネットワークを活用し、資料・情報源の拡充を図る。
  7. 学校図書館は、地域住民の要望があり、人的・経費的に必要な措置がなされ、効果的な運営が期待できる場合には、地域に開放する。
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